教養としての「住宅制振装置」第二章_制振装置メーカーの誕生
さて、連載企画「教養としての住宅制振装置〜なぜ今evoltzなのか〜」第二章です。
今回の企画を始めるに際し、弊社にて、制振装置メーカーの歴史を調べてみました。
その中でわかったことは
・震災
・法律
・大手ハウスメーカーの動き
この三つが大きく影響しているということです。
また、住宅性能表示制度によって耐震等級2や3を取得した割合の推移を確認していくと、
「なぜ今evoltzなのか」
が歴史的に見えてきます。
前章では、神戸地震をきっかけにして始まった日本の建築基準法の改正、品確法の制定、その中でも特に耐震等級の導入について解説しました。
本章では、耐震等級の導入、その後、「なぜ、制振装置メーカーが誕生し、普及してきたのか」を解説していきます。
■耐震等級制定その後
耐震等級が制定され、建築物の安全性に対する基準が明確になりました。
しかし、耐震技術の普及は容易ではありませんでした。
とりわけ、既存の住宅や歴史的建造物など、耐震性が低い建物は、そのままでは大地震による倒壊の危険性をはらんでいます。
国民の命と財産を守るため、我が国は重要な岐路に立たされていたのです。
実際に新築における耐震等級制定後の推移は下記の通りです。
※住宅性能表示の利用率推移より抜粋
制度が導入されてからも在来木造において耐震等級3の割合は増えず、2004年にようやく2%を越えた程度でした。
その原因は、技術不足や建築費用増加により、取り組み開始が遅れたことにあります。
■地震発生による家の倒壊
地震が度々発生する為、大地震への対策が必要になってきました。
下記は、品確法制定後の大規模地震発生による、被害状況です。
参照:気象庁 日本付近で発生した主な被害地震(平成八年以降)
https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/higai/higai1996-new.html
■制振装置の誕生
そんな中、大地震からの倒壊を防ぐ新たな手段として注目されたのが、「制振装置」の導入です。
「制振装置」は、建物に取り付けることで地震のエネルギーを吸収し、振動を抑制する技術です。
これにより、建物自体の耐震性を向上させることができるようになります。
特に、耐震性が低い家屋においては、後付けできる「制振装置」は、地震対策として非常に有効な手段として認識され始めたのです。
その中で特に注目したいのが、下記記事です。
この当時の在来軸組への「制振装置」についての考えが記載してあります。
・2008.02 多様化する制震装置
多様化する制震装置 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
耐震性能の低い時代の「制振装置」は、”構造が変形してから効果を発揮する”製品が多かったのです。
制振装置が開発販売された順を下記に記載します。
※日経クロステック 調べ
「耐震等級」は制定されましたが、普及は遅々として進みませんでした。
それでも、大地震対策はしなければならない・・・。
そのジレンマを解決するために、「制振装置」が誕生したのです。
しかし、その当時の「制振装置」は、構造が変形してからようやく制振の効果を発揮する・・・つまりあくまで住宅の倒壊を防ぐことを目的としたタイプがメインだったのです。
次の章では、大手ハウスメーカーの制振装置について解説して行きます。