教養としての「住宅制振装置」第五章_ 3.11(東日本大震災)後の業界
さて、連載企画「教養としての住宅制振装置~なぜ今evoltzなのか~」第三章です。
今回の企画を始めるに際し、弊社にて、制振装置メーカーの歴史を調べてみました。
その中でわかったことは
・震災
・法律
・大手ハウスメーカーの動き
この三つが大きく影響しているということです。
また、住宅性能表示制度によって耐震等級2や3を取得した割合の推移を確認していくと、
「なぜ今evoltzなのか」が歴史的に見えてきます。
前章では、長期優良住宅の制定による耐震等級の普及と東日本大震災に関して解説しました。
本章では、東日本大震災以降の業界について解説します。
◾️制振装置セカンドウェーブ
東日本大震災の翌年から、制振装置メーカーの開発が活発化します。
開発メーカーの一覧です。
2012・4 住友ゴム工業 木造住宅用制震ダンパー『MIRAIEミライエ』販売
2012・7 アイ・エム・エー 制震システム『エックス・ウオール』販売
2012・11 大建工業 木造住宅用 ダイライト制震システムを販売
2013・3 住友ゴム工業 木造住宅用制震ダンパー『MIRAIE・2×4』発売
2013・9 住友ゴム工業 MIRAIEのリフォーム対応製品販売
2014・ 千博産業(現evoltz) BILSTEIN社に製造委託し開発されたevoltz S042を発売開始
2014・9 カネシン 2×4工法向け制振装置『V―RECS2×4<SG>』販売
2015・9 国元商会 メーカー 木造住宅用鋼製制震ダンパー『Uスパイダー』を発表
2012年に発売された住友ゴム工業のMIRAIEは現在業界のシェアナンバーワンと言われております。
この製品は高減衰ゴムを利用した大型の制振ダンパーで、耐力と制振成分を併せ持つ素晴らしい製品です。
2014年には千博産業がevoltzを発売開始。千博産業が企画・開発したものをドイツ・ビルシュタイン社に製造委託したことで、世界レベルの高品質・高性能を実現。
また、下記のような大手ハウスメーカーでも制振装置の開発に乗り出しました。
2012・7 住友不動産 制震装置と収納スペースを融合させた注文住宅を販売
2013・11 細田工務店 住宅構造研究所、東京工業大学笠井教授の3社が共同開発した安価な制振工法
『延樹・ブランチ』を発売開始。これは金属疲労を利用したものとして画期的なもの。
さらには日経アーキテクチュア2015年3月25日号 P72~P73 特集「安心を売る防災住宅」では、
下記のような記事が掲載されました。
積水ハウス 3割程度だった制振装置の採用率が、東日本大震災以降、約9割に高まった
ミサワホーム 都心部で7~8割が制振装置を採用
旭化成ホームズ 約6割の建て主が制振装置を採用
住友林業 制振技術を加えた家づくり
大和ハウス工業 制振技術と耐震技術のハイブリッド『xevoΣ(ジーヴォシグマ)』を14年に発表
このように、大手ハウスメーカーもこぞって制振装置を準備し、採用を始めています。
まさに、制振装置セカンドウェーブです。
◾️耐震等級3取得の推移
耐震等級3の取得に関しても変化があります。
下記グラフは性能表示制度の耐震等級取得の推移です。
2009年から微増ではあるものの少しづつ取得する数が増えています。
しかし気になるのが、2015年です。
こちらは推測の域を出ませんが、東日本大震災から5年が経過し、“耐震への意識が下がってきているのか?”との感が強くなってしまいます。
2009年から増加してきた耐震等級3の取得率が約5%も低下しているからです。
その翌年発生したのが、住宅業界の地震対策の転換期となった”熊本地震”です。
この地震をきっかけに、耐震等級のあり方が変わります。
本章では、東日本大震災以降の業界の動きに関して解説しました。
制振メーカー、大手ハウスメーカーが開発を加速し、耐震等級3取得も微増。
次章では、熊本地震の解説を行います。