教養としての「住宅制振装置」第六章_ 熊本地震の影響
さて、連載企画「教養としての住宅制振装置~なぜ今evoltzなのか~」第三章です。
今回の企画を始めるに際し、弊社にて、制振装置メーカーの歴史を調べてみました。
その中でわかったことは
・震災
・法律
・大手ハウスメーカーの動き
この三つが大きく影響しているということです。
また、住宅性能表示制度によって耐震等級2や3を取得した割合の推移を確認していくと、
「なぜ今evoltzなのか」が歴史的に見えてきます。
前章では、 3.11(東日本大震災)後の業界に関して解説しました。
制振装置セカンドウェーブ、耐震等級取得の推移を確認しました。
2015年に耐震等級3の取得率が減少してしまいましたが、その翌年に発生したのが熊本地震でした。
本章では、熊本地震とその影響について解説します。
◾️2016年熊本地震の概要
2016年熊本地震は、2016年4月14日と16日に熊本県と大分県で発生した一連の地震です。
最大震度は7で、死者298人、負傷者2,500人以上、全壊家屋約12万棟という甚大な被害をもたらしました。
・主な地震
4月14日21時26分:熊本県熊本地方 益城町 震度7(気象庁マグニチュード6.5)
4月16日午前1時25分:熊本県阿蘇地方 阿蘇市 震度7(気象庁マグニチュード7.3)
4月16日5時16分:熊本県熊本地方 宇城市 震度6強(気象庁マグニチュード6.4)
・被害状況
死者:298人
負傷者:2,500人以上
全壊家屋:約8千棟
半壊家屋:約3.4万棟
一部損壊家屋:約15.3万棟
経済被害:約4.6兆円
・地震の特徴
熊本県阿蘇地域を震源とする活断層が動いた
前震と本震の震源が近かった
前震と本震がともに震度7の大地震であった
余震が活発で、長期間にわたり発生
地震による土砂災害も発生
◾️住宅の被害に関して
熊本地震での大きなポイントは、性能表示制度の耐震等級3の有効性です。
下記は国交省の調査結果です。
益城町における実地調査において、耐震等級3の住宅は建築基準法レベルの住宅と比較した際に、”倒壊しなかった”という結果が出ました。
出典:国土交通省住宅局 「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント より
この結果から、まずは大地震対策としての性能表示耐震等級3の有効性が証明されたかと思います。
ここから住宅事業者は、耐震等級3へ移行する会社(継続する会社)、取り組まない会社へと分かれていきました。
下記は2016年以降の性能表示制度の耐震等級推移です。
在来軸組工法に関しては、2016年→2021年で約2倍に増加、全体でも25%UPしており、熊本地震は大きなきっかけとなりました。
▪️制振装置メーカーサードウェーブ
制振装置メーカーも下記の通り開発が進みます。
2016・11 スリーエム ジャパン 3M木造軸組用摩擦ダンパー『FRダンパー』販売
2016・12 パナソニックESテクノストラクチャー 耐震住宅工法テクノストラクチャー専用の制震システム『テクノダンパー』開発
2017・3 江戸川木材工業、日立オートモティブシステムズ 共同開発 住宅柱に取り付ける『柱取付型オイルダンパー制震装置』販売
2017・9 evoltz L220発売開始
2017・6 ストローグ 耐震パネルと軸組みを接合、木造住宅用制振『制震ダンパーコネクタ』販売
2018・2 BXカネシン地震のエネルギーを吸収『DIT制震筋かい金物』販売
evoltzでも筋かい型のL220を開発し、1本あたりのエネルギー吸収量をあげ、本数減に成功しました。
地震をきっかけに、耐震と制振の取り組みは大きく変化します。
次章では、より地震対策を強化する構造計算の必要性と普及率に関してお話します。