対談:evoltzB5 実験結果
渥 美:耐震等級3のフレームにevoltzB5を装着して実験したところ、大地震を3回耐えられました。 佐藤先生、いかがでしょうか?
佐藤氏:見た正直な感想はevoltzを付けた時の効果が、想像以上にあったという感じでした。耐震等級3にプラスどのくらいのレベルかなと思っていましたけど、耐震等級3は大地震に1回しか耐えられなかったのが、evoltz付きは大地震に3回耐えられた。
ここまで効果あるってちょっと正直驚いている感じですね。
渥 美:変位量で言うと耐震等級2から遡ると、耐震等級2のフレームが最初の大地震で揺らしたところで116mmの変位、等級3の時に81mm。evoltz装着が40mm。evoltzを付けると6割か7割近く変位が収まったという事も、ここまでしっかり出てくれたと正直感じています。そのあたりの変位は、佐藤さん当初からすごく大事なポイントだよとおっしゃっていましたが。
変位は、やっぱり大事!
佐藤氏:建物っていうのは、いかに変形させないかなんですね。実験を見て分かった通り、結果最後、釘が破断して面材が効かなくなっていったら、それ以上変形すればするだけそこに追随できずに壊れ始める。だからもうとにかく変形をさせない、硬く動かさないっていうのが基本です。それがやっぱり当然だけど、耐震等級2に比べたら耐震等級3が良くなり、更にevoltzではかなり変位が減っていますから、相当変位を減らすためにも効果的ですよね。
渥 美:私もそれを実験で実感しました。耐震等級2,3の実験を行った。耐震等級2は等級1の1.25倍。
実際同じ揺れを発生させたときのダメージの具合、全然そこが比例していないというか、1.25倍の差じゃないなと率直に感じましたが、全然違いますよね。
佐藤氏:全然違いますよね。1→2が1.25で、1→3が1.5ってなると、2→3の差って1.2倍です。ですけど、その差って計算上はさほど大きくないし、じゃあ耐力壁を増やすっていうのはさほど大きくはないですよね、実は。だけど、この実験の結果を見ると、かなり大きいですよね。この差が数字以上に大きく感じましたね。
渥 美:おそらく今日見て頂いたみなさんには、その1.2倍の差と壁量ですね、壁量だけではありませんが。ダメージが1.2の差っていうのが、全然違うなというのを見て頂いた。確認できたのではないかと思います。やはりこの耐震等級3が必要だという事を伝えていくには、佐藤先生のこれまでの活動プラスこういった公正な実験をしっかり見て頂く事も非常に有効なのかなと。当初、これを考えた時には考えていませんでしたが、定期的にやってもいいと感じました。
佐藤氏:これはね、やっぱりこれだけで終わるのはすごく勿体ないですよね。だから、定期的にこれを見て頂く機会をつくるのは非常に重要かなと思いますね。今回見て感じたのは、制振装置が速度依存型と変位依存型ってあるのをね、説明した通りですが。そこでどう使うか。どちらも考え方次第という話はしました。だけど今すごく感じたのは、いわゆる速度依存型であるオイルダンパーを使ったときには、微小変形の最初の地震波の時から当然というか既に効いていて、それが実験を進めていって、その構造体がどんどん損傷して変位が大きくなっていっても、ずっと効いていました。
微小変形から変位が大きくなった所まで、 ずっと効き続けているのはすごく効果的
佐藤氏:evoltzを付けた場合、大地震を3回連続かけた後に、耐力壁の耐力が無くなっていますけど、evoltzのみの力で、最後は耐え抜いた。微小変形から変位が大きくなった所まで、ずっと効き続けているのはすごく効果的ですね。これが一般的に変位依存型の場合だと、ある程度の傾きが出てから効くっていうのは、これは皆さん知ってきている事です。だから変位が大きくなるところで効く、だけどそれはその手前が効かない。逆に言うと、もっと変位依存型を柔らかくして早く効くようにすれば微小変形に効きますよ。だけど微小変形で効くけど、それがもっと進んで大きく損傷してくると、効き目がなくなる可能性があると。どっちかに効かせるけど、どっちかに効かないという可能性がある。そう考えていくとやっぱり、速度依存型の広範囲に効き続けるっていうのはかなり有効的だなと感じますね。
渥 美:ここ結構ポイントかなと思っていますが、最後に揺らしたevoltzかなりストロークして吸収していましたが、あれはevoltzが吸収してすごいねっていう話ではなくて、耐力がまったくなくなっている。ということは、世の中にいろんな制振装置あると思いますが、evoltzは幸い、早い微小変形領域から効くので、小さな揺れから効き始めて、最終的には守れなかった耐力の低下した後も効いてはいますが、最初も効いているからまだ良い訳ですよね。そうじゃないと、耐力を失うまで変形してから効くものだと、耐力が無いときからただ制振が効くっていう最後のevoltz、今日見て頂いた状態になるのだなと。
佐藤氏:そうそう、まさにそういうことです。