対談:「耐震」と「制振」は住み分けるべき

渥 美:当社のevoltzの特徴として、壁倍率は持っていませんが、最近その置き換えという話もけっこうあります。壁倍率を保有している制振装置は多いですが、建物が本来持っていた壁量・壁倍率をとって両方兼ねてしまうリプレイスの考え方が少しずつ、普及しているのかなと…、その良し悪しは何かありますか?

佐藤氏:それってちょっと危険。考え方が危険かなと思っていて。やっぱり耐震性能を確実に取れる状況っていうのがよく分かってないですよね。たまたま制振装置の実験をしたら、壁倍率がたまたま出たってだけで、それを本当にそのまま耐力壁と同等に置き換えて設計して良い物かなと。だからやっぱり耐震と制振は、住み分けるべき。耐震は耐震として耐力壁でしっかりとるべきで、制振は制振なんですよ。だからそこをごちゃ混ぜにする考え、それがまるで合理的なような考えにすり替えるのはちょっと、違うかなと。

渥 美:そうですね、私も感覚的にはそこは二つの軸で考えた方がいいなと思っています。骨や筋肉を中心とした骨格ですね、そこを削って両方備えている制振のような耐震部材に、置き換えるっていうのは何か危険だと思うので、やはり柱・筋交い・面材・耐震部材っていう、司る核となる耐震は置いておいて、後はこの制振はどこを選ぶのかの方が健全なのかなと感覚的に思います。最近、やはりコストの面とか、壁の箇所数も増えて、その制振装置を設置する空間効率というのは非常に求められている中で、合理的に聞こえますね。交換すれば壁倍率も持って制振の効果もありますっていうのが合理的に聞こえますけど、ここは一体どれが正解なのかなっていうのが、ちょっと私もまだ分からない所がありますが、感覚的には佐藤先生がおっしゃった方が健全なのかなと思っています。